TOHIN ロータリーブロワ SD・FD・HCシリーズ
- ブロワ・ポンプ
メンテナンスに関する説明・手順書
はじめに
浄化槽用ブロワは時計と同じように365日連続運転を行い、休むことがありません。長期間、安定してお使いいただくためには、日頃からブロワの状態に気を配っていただき、定期点検(維持管理)を行っていただくことが重要です。ブロワの部品は、普通に使っても長い年月使用すれば摩耗してきますが、無理、あるいは異常な使用を続けますと、部品の損耗は激しくなり、故障の原因になります。ブロワを正常な状態でご使用いただき、性能、機能を損なわずにより長くご使用していただくためにも、下記の注意事項をよくお読みいただき、充分ご理解のうえ、販売、施工および維持管理業務などにお役立てください。
散気方式の説明とブロワの働き
浄化槽とは「汚水・汚物を微生物の働きを借りて浄化する装置」です。人間が排泄する汚物には沢山の栄養分があり、好気性微生物(バクテリア)がこの汚物を食べ、繁殖し、微生物の消化作用により汚物を炭酸ガスと水に分解します。
きれいな上澄液と活性汚泥に分離され、活性汚泥は再度ばっ気室に送り返され、上澄液は消毒室を通り安定したきれいな水になって放流されます。微生物に充分活動できる環境が与えられていれば、浄化の機能が充分に発揮されます。しかし、微生物が充分活動できない環境にしてしまうと、浄化の機能は発揮できません。
浄化槽とは、微生物の飼育箱と考えればいいわけです。微生物も生き物ですから、酸素を吸って生きています。
そのため、熱帯魚の「水槽」と同じように365日絶えず連続で槽内に空気を送り込む必要があります。ブロワは、この汚物を粉砕し、好気性微生物に酸素を供給する重要な役目をもっており、浄化槽の心臓部といえるものです。その構造、施工、維持管理の有無が、浄化槽の機能に大きな影響を与えます。
維持管理の重要性
浄化槽およびブロワが良い性能のものでも、適切な施工、維持管理が行われなければ、その性能を100%発揮できません。装置・施工・維持管理の三つが適切なものであって、はじめてその性能が発揮できます。
ブロワの維持管理とは、ブロワが正しい条件のもとで、正しく使われ、正常に動いているか点検し、万ー不備な点があれば速やかに処置することです。私たち人間でも不養生するとコンディションが崩れます。ブロワも時計と同じように、365日止まることなく動くので、日頃からその健康管理に気を配り、ちょっとした異常にも対処しなければなりません。
特にブロワ以外の原因による異常も、現象としてはブロワにあらわれますので、全てにわたるチェックが必要になります。ブロワの部品は、普通に使っても長く使用すれば摩耗しますが、無理な、あるいは異常な使用を続けますと、部品の損詫は激しくなり、故障の原因になります。弊社の浄化槽向けブロワは、消耗パーツは全て現場で交換できるように設計されているのが最大の特徴です。
維持管理・メンテナンス方法
TOHINロータリーブロワの分解図と部品表
SD型 FD型 HC型
〈注意事項〉
※オイルの減少によってブロワが焼付などを起こすことがありますので注意してください。
※オイル劣化によって潤滑性能が低下し、音高、温度の異常な上昇などの原因になります。
※使用期間が1年以上経過したオイルは、全量交換してください。
(1)オイル量の点検
チャンバー内のオイル量をオイルゲージにて点検してください。
※異常が起きた場合、オイルの減りが早くなりますので、オイル補給の際は必ずオイルゲージ上限まで
補給してください。
SD型…
オイル面が上下の赤線内→OK
オイル面が下赤線より下→オイル捕給
FD型…
オイルゲージ棒の上限と下限の線内→OK
オイルゲージ棒の下限線以下→オイル補給
HC型…
オイルゲージ棒の上限と下限の線内→OK
オイルゲージ棒の下限線以下→オイル補給
※オイルの減りが異常に早い場合は、オイル漏れか、昇圧のいずれかが考えられますのでお調べください。
(2)オイルの補給
オイルの点検において補給の必要性を認められたら、下記補給方法にてオイルを補給してください。(オイル量が有効量以下になると、オイル循環がなされずにオイル切れ運転となり、音高やブロワロック、モータ
停止などを起こします。)
〈指定オイル→出光ダフニースーパーハイドロ 68x〉
※弊社より1リットル~ご購入いただけます。
※上記以外のオイルの使用は、潤滑不良による音高、温度上昇増大、オイル消費増大、焼付などの原因となることがあります。また、料理用油などの植物性オイルは焼付の原因となりますので、絶対に使用しないでください。
〈オイルの補給方法〉
- 電源を切りブロワを停止させる。
- SD型/FD型…チャンバーのオイル補給口の補給キャップを工具でゆるめて取り外す。
HC型…ベースのオイル補給口の補給キャップを工具でゆるめて取り外す。 - 補給口よりオイルを規定量まで入れる。
SD型…オイルゲージ上赤線まで
FD型…FD型オイルゲージ棒上限線まで
HC型…HC型オイルゲージ棒上限線まで
※規定量以上に入れ過ぎますと空気出口がふさがれ、ブロワ内の圧力が上がり、モータが停止する恐れが
ありますので注意してください。 - 補給口キャップのゴムパッキンを確実に装着して締め付ける。
※ゴムパッキンの装着を忘れたり、パッキンにゴミが付着している場合や、パッキンが損傷している場合は
オイル漏れが発生する可能性がありますので注意してください。
※オイル補給時、外部にこぼれたオイルをウエスなどでふき取ってください。 - 電源を入れブロワを運転させる。
この際、オイルがオイル循環ホース内を移動していくか確認してください。
〈オイル交換方法〉
- 電源を切りブロワを停止させる。
- 点滴ノズルに差し込んである方のオイル循環ホースを、ホースバンドをゆるめて抜く。
- オイル循環ホースの先端を受容器に差し込む。
●HC型はオイル循環ホースに加え、共通ベースのオイル補給口キャップを外し、オイル抜きパイプ(オプション)・市販の内径φ13ホースを取付ける。 - 電源を入れブロワを運転させるとチャンバー・共通ベースに圧力がかかり、オイルがオイル循環ホース・
オイル抜きパイプを通り、受容器に抜き取られる。 - オイル循環ホース・オイル抜きパイプ用ホースよりオイルが出なくなったら、電源を切り運転を停止する。
- オイルフィルターの清掃・交換を行う。※『2、オイルフィルタ-の清掃、交換』を参照
- オイルフィルター・オイル循環ホースを元通り点滴ノズルに差込み、ホースバンドにて締め付ける。
●HC型はオイル抜きパイプを取外す。 - オイルを規定量入れる。
SD型…オイルゲージ上赤線まで
FD型…FD型オイルゲージ棒上限線まで
HC型…HC型オイルゲージ棒上限線まで - 補給口キャップを完全に締め付け後、電源を入れブロワ運転を開始する。
オイルフィルターが目詰まりしてくると、オイル循環が円滑になされなくなり、ブロワの潤滑不良となります。オイル交換時、チャンバーのオイルを抜き取った後に、オイルフィルターの清掃又は交換を行ってください。
SD/FD/HC型
- オイル交換の手順①~⑤にしたがってオイルをチャンバー内から抜き取る。
- オイルフィルターに差し込んでいる方のオイル循環ホースを、ホースバンドをゆるめて外す。
- 工具でチャンバーのオイルフィルターをゆるめて取り外す。
- オイルフィルターを洗浄剤でよく洗浄する。
※この際、フィルターの網を破損させないよう注意してください。破損したまま使用しますと、大きな不純物が通過してしまい、点滴ノズルが目詰まりします。目詰まりしたオイルフィルターを使用した場合も、オイル循環が円滑になされず、ブロワ潤滑不良となり、温度の異常な上昇、焼付、モータ停止などを引き起こします。オイルフィルターの耐用年数は約3年ですが、点検時、劣化の状態により交換を行ってください。 - 清掃または交換したオイルフィルターのネジ部にシールテープを2~3重に巻いて、ヘルメシールを塗布し、FD/HC型は、元通りホースロが上になるように締める。(シールを忘れると漏れが生じます。)
- オイル循環ホースを元通りオイルフィルターのホースロに差込み、ホースバンドにて締め付ける。
エアーフィルターが汚れて目詰まりしてくると、ブロワヘ必要な空気量が取り入れられなくなり、風量不足が発生します。また、ブロワ温度が上昇し、オイルの消費が増大したり、オイルシールの硬化・摩耗が進んでしまいますので必ず定期点検、清掃、交換を行ってください。
〈エアーフィルターの清掃方法〉
- 電源を切ってブロワを停止させる。
- 蝶ボルトを外して、フィルターカバーを外す。
- エアーフィルターを取り出し、「ホコリ」をはたいて汚れをよく落とす。汚れのひどいときやオイルが付着しているような場合は、中性洗剤で洗い、水でよくすすぎ、完全に乾燥させる。
※状態が悪い場合は、新しいフィルターと交換してください。 - きれいになったエアーフィルターを元通りに納める。
- カバーをかぶせ、蝶ボルトで締め付ける。
- 電源を入れ、ブロワを運転させる。
※上記作業中、吸気口からブロワ本体(シリンダー)内へ、ゴミなど異物を落としこまないように
充分注意してください。ゴミなど異物が混入した場合、音高、ブロワロック、モータ停止などの
原因になります。
点滴ノズルは目詰まり状態になってくると、オイル循環がなされなくなり、オイルが切れた状態での運転につながり、ブロワロックやモータ停止が発生します。定期点検時に点滴ノズルの点検・清掃をしてください。
〈点滴ノズルの清掃方法〉
- 電源を切って、ブロワを停止させる。
- 点滴ノズルのネジ(M6×20L)をドライバーでゆるめて取り外し、0リングを外す。
- 取り外したネジの溝をウエス等でよく清掃する。※汚れが重度の場合は洗浄剤で洗浄する。
- 清掃したネジにOリングを装着して、元通り点滴ノズルに0リングが隠れる程度に締める。
※この際、ネジを締め過ぎてOリングのはみ出しや損傷を起こさないよう、またOリングにゴミや
キズなどを付けないように注意してください。
※はみ出し現象や損傷およびゴミ付着のOリングを使用しますと、オイル漏れとブロワヘの
オイル供給減少によるオイル切れ運転などを引き起こします。 - 電源を入れブロワを運転させる。
※オイルがオイル循環ホース内を流れて行くか確認してください。
オイル漏れ、エアー漏れがあるとオイル消費が増大し、オイル切れ運転を起こしたり、風量不足が生じる可能性があります。エアー漏れがひどい場合は、チャンバーに圧力がかからなくなり、オイル循環がなされずオイル切れ運転を引き起こす原因になりますので下記の点検項目を確認して下さい。
- ブロワプーリー側ブラケット オイルシール挿入部(オイルシール不良)・・・ 全機種
- ブロワプーリー側ブラケットとブロワシリンダー合せ目(締め付ボルト締付不良・Oリング挿入不良・
Oリング損傷)・・・全機種 - 反負荷側ブラケットとブロワシリンダー合せ目(締め付ボルト締付不良・Oリング挿入不良・
Oリング損傷)・・・全機種 - 点滴ノズル⊕ネジおよびOリング部(ネジ締め付不良・Oリング不良)・・・全機種
- オイル循環ホース点滴ノズルロ差込み部(ホースバンド締め付不良・差し込み不良
オイル循環ホース損傷)・・・全機種 - ブロワシリンダ一吐出エルボホースロ捻じ込み部(捻じ込み不良・シール不良)・・・SD型
- オイル回収ホース 吐出エルボホースロ差し込み口部(ホースバンド締め付不良・差し込み不良・オイル回収ホース損傷 )・・・SD型
- オイル回収ホース チャンバー差し込み部(ホースバンド締め付不良・差し込み不良・オイル回収ホース
損傷)・・・SD型・HC型 - チャンバー接続パイプ・ブロワシリンダー捻じ込み部・チャンバー接続部
(捻じ込み不良・シール不良) ・・・FD型・HC型 - オイルフィルター捻じ込み部(捻じ込み不良・シール不良) ・・・全機種
- オイル循環ホース・オイルフィルターホースロ差し込み ホースバンド締め付不良・差し込み不良・オイル循環ホース損傷 ・・・全機種
- 安全弁捻じ込み部 (捻じ込み不良・ゴムパッキン挿入不良・ゴムパッキン損傷) ・・・全機種
- 安全弁逃し孔(昇圧)・・・全機種
- オイルゲージとチャンバーの合せ目(捻じ込み不良・Oリング挿入不良・Oリング損傷
・オイルゲージ破損)・・・SD型 - オイルゲージ取付ネジ部 (捻じ込み不良・Oリング挿入不良・Oリング損傷
・オイルゲージ破損)・・・SD型 - オイル補給口キャップ捻じ込み部(捻じ込み不良・ゴムパッキン挿入不良
・ゴムパッキン損傷)・・・FD型・HC型 - チャッキ弁取付部(捻じ込み不良・シール不良)・・・全機種
- 吐出口接続ホース接続部 (ホースバンド締め付不良、差し込み不良、ホース損傷)・・・SD型
- 配管捻じ込み部(捻じ込み不良・リール不良・破損)・・・FD・HC型
- 配管(接続不良・はずれ・破損)・・・全機種
Vベルトは使用していると伸び、損傷、劣化することによるスリップが原因の風量不足、温度上昇やベルト切れによるブロワ停止、モータ損傷などを起こしますので、状況に応じてベルト張りの調整やベルト交換を行ってください。
- Vベルトがスリップしている場合
- Vベルトの中央を指で軽く押して10mm以上のたわみがある場合
- ベルト張りが強すぎて音(振動音・ベアリング音)が出ている場合
〈Vベルトの調整方法〉
- 電源を切ってブロワを停止させる。
- モータ取付ボルトの4ヵ所を緩める。
- ベルトの張りが適当な位置までモータを移動する。(ベルト押さえ加重0.5kg時3~5mm)
※あまり張り過ぎますと音高(振動音・ベアリング音)となりますのでこ注意ください。
※張りが弱いとスリップし、プーリー溝が摩耗し、熱によりモータが損傷しますのでご注意ください - プーリー間の平行に注意して、モータ取付ボルト4ヵ所を締め付ける。(プーリー間の平行が
出ていないと、音の発生や、Vベルトの早期破損が起こりますので、充分に気を付けてください) - 電源を入れブロワを運転させ、異常がないか確認する。
損傷や劣化したベルト、オイルが付着したベルトは、新品と交換してください。交換時には、前のものと同じサイズのものを使用してください。
※下記の[一般用機種別Vベルトサイズ]を参考にしてください。
ブロワの回転方向は、プーリー側より見て反時計方向ですので、ベルトの入れ替え時や点検時に手で回転させる場合、この点にご注意ください。
TOHIN ロータリーベーンブロワ SDタイプ ベルトの取り付け・取り外し方法
〈一般用機種別Vベルトサイズ〉
SD型
SD-120 | SD-150s | SD-200s | |
---|---|---|---|
50Hz用 | M-33(レッド) | M-33(レッド) | M-33(レッド) |
60Hz用 | M-33(レッド) | M-33(レッド) | M-33(レッド) |
SD型
FD-250s | FD-300s | |
---|---|---|
50Hz用 | A-35 | A-35 |
60Hz用 | A-35 | A-35 |
HC型
HC-251s | HC-30s | HC-301s | HC-301H | HC-40s | HC-401s | HC-50s | HC-501s | HC-60s | HC-80s | HC-100s | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
50Hz用 | A-40 | A-44 | A-45 | SA-41 | A-52×2 | A-52×2 | A-64×2 | A-64×2 | B-74×2 | B-84×2 | B-93×3 |
60Hz用 | A-40 | A-44 | A-44 | SA-41 | A-52×2 | A-52×2 | A-64×2 | A-64×2 | B-72×2 | B-84×2 | B-93×3 |
プーリーは使用していると溝が摩耗します。溝が湾曲に摩耗してくるとVベルト側面との接触面が減り
Vベルトの寿命低下、トラブルにつながります。
点検時、Vベルトがプーリー溝に深く沈んでいる場合、摩耗が確認された場合は交換を行ってください。
モータプーリーは回転数が高い為、摩耗が早まります。
※HC-60S・HC-80S・HC-100Sのモータプーリー締付ネジは、モータキー上部とシャフトの2箇所になりますのでご注意ください。
ブロワに不具合が生じた場合は、原因をよく確認してからメンテナンス、対策を行ってください。原因ではない箇所の修理はブロワを損傷させることにつながります。不具合の原因がブロワではなく、その他の原因に起因する場合がありますのでこ注意ください。故障の原因と対策は下記の表を参照してください。交換部品は別途部品表を参照してください。
現象 | 原因 | 対策 |
---|---|---|
音が高い |
|
1/2…槽、配管、散気管の清掃 3…カバー、基礎台の取り付け直し 4…ベアリング、モーター交換 ※モーターを分解した場合保証ができなくなります。 5…ブロワを分解、清掃 6…オイルの補給 7…オイル交換、点滴ノズル、オイルフィルターの清掃/交換 8…スクリューネジ締め付け 9…ベルトの張り具合の調整 |
熱くなる |
|
1…槽、配管、散気管の清掃 2…エアーフィルターの清掃/交換 3…オイルの補給 4…ベルトの張り具合の調整 5…オイル交換、点滴ノズル、オイルフィルターの清掃/交換 |
風量不足 |
|
1…エアーフィルターの清掃 2…オイルの補給 3…オイル交換、点滴ノズル、オイルフィルターの清掃/交換 4…ベルトの張り具合の調整 5…配管の点検修理 6…配管の長さの調整 |
オイルのヘリが早い |
|
1…配管/散気管の点検/清掃 2…エアーフィルターの清掃/交換 3…オイルの漏れの点検 |
オイルのヘリが早い |
|
1…配管/散気管の点検/清掃 2…エアーフィルターの清掃/交換 3…オイルの漏れの点検 |
ベルトの破損 |
|
1/2…ベルトの張りの調整 3…並行を出す |
モーターの停止 |
|
1…配管/散気管、ベルトの張りの点検 2…ブロワの分解修理 3…モーターの交換 4…修理 |